きしこんにちは。栃木・宇都宮のマロニエ会計事務所です。
グローバル化が進む中、海外の企業が日本市場に参入するため、日本に子会社(現地法人)を設立するケースが増えています。
しかし、外国法人が日本で法人を設立し、事業をスタートさせるにあたっては、日本の複雑な会社法や税制を正確に理解しておく必要があります。設立時の手続きの煩雑さだけでなく、設立後のグループ間取引や資金調達において、思わぬ「税務上のペナルティ」を受けてしまうケースも少なくありません。
本記事では、外国法人が日本子会社を設立する際に絶対に押さえておきたい6つの注意点について、税理士の視点から分かりやすく解説します。
1. 日本子会社の設立手続きの壁と、発起人を個人にする工夫
外国法人が直接発起人となって日本法人を設立しようとすると、手続きが非常に煩雑になることが多いです。外国法人の登記簿謄本(宣誓供述書)の取得やその日本語訳の作成、さらには発起人の銀行口座(資本金の払込先)の確保など、多くの時間とコストがかかります。
きしそのため、実務上よく取られる手法として、「まずは日本在住の代表者(日本人社長など)が個人として発起人になり、法人を設立する」という方法があります。
これにより、設立のタイムロスを大幅に短縮することが可能です。
2. 親会社の資本金が5億円以上なら「中小企業の特例」は使えない
日本の税制では、資本金が1億円以下の中小企業に対して様々な優遇税制(軽減税率の適用、交際費の損金算入など)が用意されています。そのため、「日本子会社の資本金は1億円以下に抑えよう」と考える経営者は多いです。
しかし、親会社(外国法人)の資本金が5億円以上の場合、注意が必要です。
日本の税制上、資本金5億円以上の大法人に完全支配されている子会社は、たとえ自社の資本金が1億円以下であっても「中小企業向けの特例」を利用することができません。これは親会社が外国法人であっても同様です。
子会社の資本金だけでなく、親会社の規模も日本の税務に影響することを覚えておきましょう。
3. 外国親会社からの借入は出資の3倍まで|過少資本税制
日本子会社が事業資金を調達する際、外国親会社から「出資(資本金)」ではなく「借入金」として資金を入れることがあります。借入金に対する支払利息は経費(損金)になるため、日本の法人税を減らす効果があるからです。
また、資本金が大きくなってしまうと、外形標準課税の適用や、登録免許税コストの増大といったデメリットも出てきます。
この借入金の比重を高くすることによる租税回避を防ぐのが「過少資本税制」です。
資金を注入する際は、出資と借入のバランスを慎重に検討する必要があります。
4. 支払利息は調整所得の20%まで|過大支払利子税制
過少資本税制と併せて検討すべきなのが「過大支払利子税制」です。
こちらは資本と負債の比率ではなく、「子会社の利益と支払利息の水準」に着目したルールです。
利益が少ない立ち上げ期に親会社へ多額の利息を支払う設定にしていると、この税制が発動し、予期せぬ税負担が生じるリスクがあります。
なお、外国親会社への支払利息は、損金算入の制限だけでなく、支払時の源泉徴収でも非常に誤りやすい分野です。実際に税務調査で指摘された事例は、海外親会社への利息を相殺したところ源泉徴収が漏れた事例で紹介しています。
5. 外国親会社との取引は独立企業間価格で|移転価格税制
外国親会社と日本子会社の間で、商品の仕入れ、業務委託、経営指導料(マネジメント・フィー)などの取引を行う場合、「移転価格税制」に注意を払う必要があります。
グループ間取引の価格を意図的に操作すれば、利益を税率の低い国へ移転できてしまいます。
税務調査で価格設定が不適切だと指摘されると、多額の追徴課税が発生する恐れがあります。事前に合理的な価格算定を行い、根拠となる文書(ローカルファイル等)を整備しておくことが重要です。
また、移転価格税制の検討の難しいところが、子会社側だけではなく、その取引の相手となる国側の移転価格税制の検討も行う必要がある点です。片側の国だけで検討を行ったとしても、その結果、もう片側の国の課税所得が圧縮されてしまうようなことがあるため、グローバル全体の観点で見て、最適な価格設定を行う必要があります。
独立企業間価格の考え方やローカルファイルの整備、税務調査で実際に指摘された取引については、移転価格税制の基礎と中小企業で実際にあったミス事例で詳しく解説しています。
6. 利益還流時の源泉所得税と租税条約の届出
日本子会社が稼いだ利益を、外国親会社へ配当として支払ったり、ロイヤルティを支払ったりする際、日本国内で源泉所得税が徴収されることがあります。
租税条約がなぜ国内法より優先されるのか、検討漏れがどこで起きるのかは、租税条約とは何か、国内法との優先関係と検討漏れが起きる理由をご覧ください。
ここで重要なのは、軽減・免除を受けるためには、実際に支払いを行う前(前日まで)に税務署へ「租税条約に関する届出書」を提出しなければならないという点です。
提出が遅れると原則通りの高い税率で源泉徴収をしなければならず、後から還付を受ける等の余計な手間が発生してしまいます。
また、そもそも源泉所得税を徴収する認識がなく、日本における税務調査で、源泉所得税の徴収漏れを指摘されるケースが多いです。
外国法人への支払いで源泉徴収が必要になる所得の一覧や、届出書が間に合わなかった場合の還付手続きなどは、外国法人への支払い時の源泉徴収ガイドにまとめています。
まとめ
外国法人が日本で子会社を設立し、事業を軌道に乗せるためには、設立時のスキーム作りから、設立後のグループ間取引の価格設定、資金調達のバランス、そして利益還流時の条約適用まで、多角的な視点での検討が不可欠です。
また、本記事で解説した論点以外にも、特定新規設立法人における課税事業者判定や、税務上の中小法人の該当判定において、通常の日本企業では検討しないような論点の検討が必要になることもあります。
きし「親会社の指示通りに経理処理をしていたら、日本の税務調査で多額のペナルティを受けた」という事態を防ぐためにも、日本進出の計画段階から日本の税務専門家を交えてプロジェクトを進めることを強くお勧めします。
お気軽にお問い合わせください
外国法人の日本子会社は、日本企業と同じ法人税の申告をしながら、親会社との関係だけで発動する税制を別に抱えています。過少資本税制、過大支払利子税制、移転価格税制、配当やロイヤルティの源泉徴収など、どれも「知らなかった」では済まされず、税務調査で初めて指摘されるケースが後を絶ちません。
マロニエ会計事務所では、日本進出を計画する外国法人と、その日本子会社の経理担当者さまに向けて、次のようなサポートを行っています。
- 設立スキームの税務検討
発起人の選定、資本金の水準、親会社の規模を踏まえた中小企業特例の適用可否など、設立前に決めておくべき論点を整理します。 - 親会社からの資金調達の設計
出資と借入のバランスを、過少資本税制・過大支払利子税制の両面から検討します。 - グループ間取引の価格設定と文書化:経営指導料や仕入価格の独立企業間価格の検討と、ローカルファイルなど根拠文書の整備を支援します。
- 配当・ロイヤルティ支払時の源泉徴収対応:租税条約の適用判定、届出書の期限管理、還付手続きまで対応します。
- 税務調査対応:親会社との取引について指摘を受けた際の資料準備と当局対応をサポートします。
栃木県宇都宮市を拠点に、東京の大手事務所と同水準の国際税務を、地元密着の細やかなサポートでご提供しています。国際税務・会計サービスの詳細はこちらをご覧ください。
マロニエ会計事務所は、Big4・大手製造業出身の公認会計士・税理士が代表を務め、TOEIC990点の語学力を活かした国際税務を得意領域としています。
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「親会社から借入で資金を入れるよう指示されたが問題ないか」「配当を本国へ送る前に何を準備すべきか」といった、検討の初期段階のご相談でも構いません。
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