月次決算の早期化ガイド|翌月5営業日で試算表を確定させる考え方と実践手順

「月次の試算表、いつも翌月末にならないと出てこないんだよね。」

スポットのご相談で、月次決算の早期化についてご依頼をいただくことがあります。中には、自社の試算表や決算書にはあまり興味がなく、年1回の決算のタイミングだけ数値が把握できればよい、という方もいらっしゃいます。

きし

しかし、会社を成長させるためには、毎月タイムリーに損益や資金繰りの情報を経営者が把握することが欠かせません。

月次決算の早期化に成功している会社は、翌月の4〜5営業日には試算表の数値が確定しています。一方、多くの中小企業では翌月末や翌々月にようやく試算表が出来上がるのが実情です。

この差はなぜ生まれるのでしょうか。会社全体の意識といった抽象的な要因もあれば、ツールや業務プロセスといった実務的な要因もあり、原因は様々です。

そこで本記事では、月次決算の早期化にあたって重要な考え方や具体的な方法論を解説していきます。1つでも皆様の月次決算早期化のヒントになるポイントがありましたら幸いです。

目次

月次決算を早期化することのメリット

月次決算を早期化することの最大のメリットは、「経営判断の迅速化」です。

中小企業の多くでは、翌月末や翌々月に試算表が作成されることが一般的です。しかし、翌月末や翌々月に試算表が出てきたとしても、それはすでに遠い過去の話です。

決算は何のために行うのか。実績の確定という目的はもちろんありますが、それだけではありません。将来の経営判断に役立てるための数値情報を提供するという、もう一つの重要な目的があります。

1〜2か月後に売上や利益の数値を把握できたとしても、それは過去の話です。タイムリーに数値を把握できれば、次の経営の打ち手を考えることができます。経営判断に役立たない時期に試算表が出来上がっても、将来を見ている経営者にとっては意味がありません。

そのような状態が続くと、経営者も試算表や決算数値にどんどん興味がなくなっていき、経営管理もずさんになってしまいます。月次決算が遅いということは、単に書類の作成が遅いという話ではなく、経営状況そのものに影響する改善すべき課題なのです。

逆に、月次決算を早期化できれば、経営者にとって有益な数値情報をいち早く把握できるようになります。経営者が試算表や決算書に興味を持つようになり、経営改善のきっかけが生まれます。

経営上手な経営者は、毎月「試算表はいつできるのか」と試算表の完成を心待ちにしています。

会社の経営数値に経営者が関心を持てるようになれば、経営改善につながります。経営改善につながれば、会社の利益も上がり、従業員の給料も上がります。新たな機械や車両などの設備投資を行うこともできるでしょう。

月次決算の早期化のメリットは、ただ単に試算表という書類が早くできるだけではなく、会社の経営状況や従業員の待遇を改善できるきっかけになるという点にあります。

月次決算の早期化を阻む壁:なぜ多くの会社で進まないのか

月次決算の早期化が重要であることは多くの経営者が理解しています。それでも実際にはなかなか進まないケースが少なくありません。

早期化が頓挫する3つの失敗パターン

筆者も月次決算の早期化のご支援をする際に、様々な管理シートやツールなどをご提案して導入するのですが、どんなに良いツールが揃っていても、経理や他部署の従業員のモチベーションがなく、結局は大して月次決算が早期化されなかった、ということが往々にしてあります。

よくある失敗パターンとしては、以下の3つが挙げられます。

月次決算が遅い原因を「経理部だけの問題」だと捉えてしまう

月次決算は営業部門からの売上データ、製造部門からの原価データなど、会社全体の情報が集約されて初めて完成するものです。経理部だけでなく、関連する全部署の協力が不可欠です。

ツールを導入すれば解決すると考えてしまう

良いツールを導入したとしても、そのツールにインプットするための情報の作成や取り込みは各従業員が行うかたちになります。従業員がただ経営者から言葉だけで伝えられた「月次決算早期化」という形だけの目標のために、モチベーションなく仕事をしてしまうと、結果としてツールの導入費用だけがかかり、決算は早期化できません。

経営者の関与が途中で止まってしまう

早期化プロジェクトが開始したらあとは経理に任せきりでその後の進捗を一切管理していない、というような傾向が見られます。経営者が月次決算早期化の重要性や必要性を従業員によく説明できていないことも、この背景にあります。

月次決算を早期化するために重要な考え方

前章で挙げたような失敗を避けるためには、具体的な方法論の導入以前に、組織としての考え方を整えることが重要です。

経営者の本気度が成否を分ける

月次決算を早期化すると決めたら、経営者(トップ)自身がまずは第1章で示したような月次決算を早期化することによるメリットを理解し、それを従業員に腹落ちさせ、各従業員に主体性を持って動いてもらうことが重要です。

経営者が腹落ちしていなければ、従業員を動かすことはできません。単に「月次決算を早くしよう」と号令をかけるだけでなく、なぜ早期化が必要なのか、早期化によって会社や従業員にどのようなメリットがあるのかを、経営者自身の言葉で丁寧に伝えることが出発点です。

全社一丸の体制をつくる

月次決算の早期化は、経営者だけでは進められませんし、一方で経理部だけでも進められません。経営者と経理部や関連部署の従業員全員が一丸となって初めて達成できるものです。

早期化を宣言するだけでなく、プロジェクトとして進捗を管理することも欠かせません。経営者が定期的に進捗を確認し、課題が発生したら一緒に解決していく。そのような姿勢を見せ続けることで、組織全体の推進力が維持されます。

月次決算を早期化するための具体的な方法

経営者や従業員の間で月次決算早期化を推進するための思いを共有することができたら、具体的な改善策の導入に進んでいきます。

Step1:現状の経理業務を洗い出す

会社によって経理業務のボトルネックとなっている工程は様々であり、まずは現状把握から進めるのがセオリーです。具体的には、毎月の経理業務の一覧を以下のように洗い出し、毎月の完了日を記載すると良いでしょう。

経理業務の一覧を洗い出す際には、大きな経理業務の括りとして、「入金管理」「支払管理」「経費精算」「給与計算」「会計ソフト入力」といったプロセスごとに業務を洗い出していくと分かりやすいです。

業務整理の簡易的な例

Step2:ボトルネックを特定する

洗い出した業務一覧をもとに、1つ1つの経理業務を吟味し、より早期に着手・完了できる作業を早期化していきます。どの工程に時間がかかっているのか、どの工程が他の作業の開始を遅らせているのかを特定することがポイントです。

Step3:改善策を段階的に実行する

各作業に対する改善案は、企業の人員状況や使用しているツールなどによって変わってきます。いきなり全ての作業を改善するのではなく、段階的に改善していくという方法も有効です。各企業の実情に応じた改善策を考案、実行していくことがポイントです。

以下では、どの企業でも共通して取り組める改善策を紹介します。

作業をなるべく小分けにして、日常作業の範囲を増やす

月次決算の遅い企業の特徴として、経理担当者が会計ソフトの入力などの1か月分の経理作業をまとめて行っているという点が挙げられます。

しかし、経理作業は月が締まる前の月中でも処理できる作業が多くあります。

例えば、預金の仕訳入力については、日次や週次で預金の入出金の仕訳を計上することができます。日常の早いタイミングで仕訳処理できれば、不明な入出金が発生してもすぐに内容を確認することができます。翌月初には、通帳の月末残高と試算表の月末残高の一致を確認するだけで足ります。

また、買掛金の消込の確認作業も、支払日の翌日などに支払状況に応じて仕訳処理を行うことができます。

このように、経理作業を小分けにして、日常の作業として処理できる部分を増やすことができれば、月末や翌月に行う作業量が軽減され、月次決算の早期化に繋がります。

きし

まとめて作業するのではなく、こまめにコツコツと作業するようにしましょう。

ツール・システムの活用で手作業を減らす

例えば、インターネットバンキングの利用を開始して銀行窓口に行く時間を減らす、クラウド会計を導入してAPI連携を活用して仕訳入力の手間を減らす、など様々な改善策があります。各企業の実情に応じた改善策を考案、実行していくことがポイントです。

Step4:試算表残高のチェックポイントを把握する

月次の経理作業で最も時間がかかるのは、不明取引の確認や仕訳誤りの訂正です。出来上がった試算表のチェックポイントを把握しておくことも月次決算の早期化にあたっては重要です。

毎日の仕訳が積み重なった結果として試算表が出来ますが、預金や売掛金など、各勘定科目の残高についてはチェックすべきポイントがあります。

例えば、預金残高については月末の通帳残高と一致すべきです。売掛金残高については、自社の入金タームに照らして、翌月以降に入金がある売上のみが計上されるべきです。

このように、各勘定科目残高についてチェックすべきポイントを把握しておけば、仕訳で誤りが発生した際にその要因を早期に発見することができます。

まとめ

月次決算の早期化のメリットや早期化を進めるにあたっての重要な考え方を解説いたしました。経営状況が良い企業の多くは、毎月の試算表が早いタイミングで出来上がっている印象があります。そして、その試算表を細かく確認し、預金の状況や利益率、売上の動向などを注視して、営業方針や経営方針をタイムリーにアップデートしています。

経営上手な経営者は、例外なく自社の数字に強い関心を持っています。タイムリーに上がってくる試算表は、経営に欠かせない存在です。

きし

本記事が、皆様の会社のさらなる発展の一助となれば幸いです。

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マロニエ会計事務所では、月次決算の早期化をはじめとする経理業務の効率化を支援しています。クラウド会計(マネーフォワード・弥生会計)の導入サポートや、経理業務フローの見直し、月次決算体制の構築など、各企業の実情に応じたオーダーメイドの改善策をご提案いたします。

  • 経理業務フローの現状分析と改善提案
    現在の業務プロセスを洗い出し、ボトルネックの特定と具体的な早期化プランをご提案します。
  • クラウド会計の導入・移行サポート
    マネーフォワードや弥生会計などのクラウド会計への移行を、初期設定からAPI連携の構築まで丁寧にサポートします。
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    経理部門だけでなく関連部署を含めた業務スケジュールの策定と、チェックリストの整備を支援します。
  • 試算表のチェック体制づくり
    勘定科目ごとのチェックポイントの整理と、誤りを早期発見できる仕組みの構築をお手伝いします。
  • 経理担当者向けの実務指導
    日常仕訳の小分け処理や残高チェックの実務について、経理担当者への直接的な指導・アドバイスを行います。

貴社の業種や規模、現在の経理体制に合わせ、最適な改善策をご提案します。

きし

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