会社合併のメリットとは?知っておくべき4つの節税効果

きし

こんにちは。栃木・宇都宮のマロニエ会計事務所です。

グループ会社経営を効率化するために、組織再編の1つとして合併が行われることがあります。

合併は、法律上の細かな手続きや税務上の処理の複雑さがクローズアップされがちです。

しかし、合併を一歩引いて俯瞰してみると、うまく使えば節税メリットを多く享受できることが分かってきます。

そこで本記事では、節税目線で見た合併のメリットを解説していきます。

目次

被合併法人の繰越欠損金の引継ぎ

グループ内のA社とB社があり、A社は毎期安定した利益を計上している一方、B社は毎期損失を計上していると仮定します。B社には繰越欠損金が積み重なっていきますが、これには繰越期限があり、使わなければ期限切れとなってしまうリスクがあります。

ここで、A社がB社を被合併法人として吸収合併を行えば、税務上の一定の要件を満たすことで、B社(被合併法人)の繰越欠損金をA社(合併法人)に引き継ぐことができます。

これにより、A社の利益とB社の繰越欠損金を相殺することが可能となり、グループ全体の納税額を減少させ、節税効果を生み出すことができます。

ただし、繰越欠損金の引継ぎ要件については慎重な検討が必要です。合併による繰越欠損金の引継ぎの要件は非常に複雑で、適格合併ならば欠損金は全て引き継げる、と誤解されている方は多いですが、繰越欠損金の引継ぎ要件は適格合併とは別物です。

また、合併日が1日ズレるだけで、合併法人で繰越欠損金を使える期が1期ズレてしまうケースもあり、専門家による繊細な税務の確認が欠かせません。

グループ会社間の損益通算

日本の法人税は、同じグループに属する法人であっても、基本的には各法人単位で法人税の計算を行います。(グループ通算制度という、グループ会社間の損益を通算できる制度はありますが、適用ハードルが高く、本記事では省略します。)

ここで、グループ内のA社とB社があり、A社は毎期利益を計上し、B社は毎期損失を計上していると仮定します。

同じグループであったとしても、B社の損失をA社の利益と相殺することはできません。

しかし、A社がB社を吸収合併すれば、両者は1つの会社になるため、1つの会社の中でA社の事業の利益とB社の事業の損失が通算され、A社とB社がそれぞれ独立で存在している場合よりも、法人税の税負担を大幅に抑えることができます。

注意点として、合併後はA社の業績にB社事業の赤字が含まれることになるため、A社の損益計算書の利益や貸借対照表の純資産額が悪化し、銀行融資や建設業の経営事項審査のランクが下がる可能性があります。

税の観点だけでは各事業の損益通算は魅力的ですが、財務数値の悪化に伴う経営面の影響にも十分気を配る必要があります。

グループ内の資産移転に伴う税負担の軽減

グループ会社のA社とB社があると仮定します。ここで、B社が所有している不動産をA社に移転したいとします。通常ですと、B社からA社へ、不動産の売買というかたちをとります。

売買になると、売却益に対する法人税、消費税、不動産取得税、登録免許税といった税金が発生してきます。

しかし、合併であれば、適格合併を前提にすると、不動産の移転に係る法人税、消費税、不動産取得税は発生しません。さらに、登録免許税も売買の場合に比べて、なんと1/5の税額で済みます。

不動産を売買する場合の、売買と合併で発生する税金の比較は以下の通りです。

 売買合併
法人税課税される課税されない(適格合併の場合)
消費税課税される課税されない
不動産取得税不動産の評価額×4%(現在は軽減税率で3%)課税されない
登録免許税不動産の評価額×20/1,000不動産の評価額×4/1,000

なお、実のところ、法人税については、100%グループ間の取引であれば、簿価1,000万円以上の資産の売買については譲渡損益調整資産となり、売却益に対して課税はされません。

また、消費税についても、買い手側で仕入税額控除を行えば、グループ全体としては消費税の負担はプラスマイナスで相殺されてゼロです。

では、何が売買と合併の場合で一番節税面での差が出てくるかというと、不動産を移転した場合の「不動産取得税」と「登録免許税」です。

「不動産取得税」は合併の場合は課税されません。「登録免許税」は合併の場合は売買との場合と比べて大きく税率が安くなります。

合併の場合、B社(被合併法人)は会社ごとなくなってしまうというデメリットはありますが、不動産以外の事業は会社分割で切り出しておくという回避策もあります。

不動産の評価額が多額になる場合は、不動産取得税や登録免許税の税負担の差は非常に大きな節税メリットになります。

きし

実際に私が過去に手掛けた事例でも、億円単位の不動産のグループ内移転を行う際に、合併を利用して、不動産取得税、登録免許税が数百万円単位で節税になったケースがあります。

会社規模拡大に伴う税務上の株価の引き下げ効果

合併は税務上の非上場株式の株価を下げることが出来る可能性もあります。株価が下がれば、相続税や所得税の節税に繋がります。

非上場株式の評価については、まず「類似業種比準価額」と「純資産価額」という2つの方式の株価を求めます。そして、その評価対象の非上場会社の規模によって「類似業種比準価額」と「純資産価額」を何パーセントずつ使用するか、が変わってきます。

会社規模は大きく「大会社」、「中会社」、「小会社」の3つの区分に分けられます。そして、会社規模が「大会社」に近づくほど、「類似業種比準価額」を採用するパーセンテージが高くなっていきます。

一般的に、「類似業種比準価額」の方が「純資産価額」よりも評価が低くなりやすいです。つまり、会社規模が大きくなるほど、「類似業種比準価額」の採用割合が増え、税務上の株価も下がっていく可能性が高まります。

合併を使えば、この会社規模を「大会社」に近づけることができます。会社規模はその会社の「従業員数」や「売上高」によって決まります。

複数のグループ会社を合併すれば、合併後の会社は「従業員数」や「売上高」が合算されるため、税務上の会社規模も大きくなる方向に動きます。

例えば、「中会社」区分のグループ会社2社を合併して、合併後の法人が「大会社」区分となった場合には、2社の株価を個別で評価するよりも、株価が安くなる可能性が非常に高いです。

なお、このような株価引き下げを目的とした取引や節税スキームに対して、税務署は非常に目を光らせています。そのため、株価引き下げのためだけに合併を行うのではなく、グループ全体の管理目的や商流などの観点から、事業上の合理性を持つことが重要です。

まとめ

節税目線で見た合併のメリットを解説いたしました。

合併は普段なかなか検討しない処理かと思いますが、これをうまく使いこなせれば、節税メリットを多く享受することができます。

法人税の節税といえば、近年では単なる収益の繰り延べ型の節税しか残されていないような印象を受けますが、本記事で紹介したような合併の節税メリットは、繰り延べ型の節税ではなく、法人のキャッシュに純粋にプラスに働く節税になります。

本記事によって合併をより身近に感じていただき、活用いただければと思います。

なお、合併の経験が少ない税理士も多く、処理も複雑であることから、合併の処理に長けた税理士にご相談することをおすすめいたします。

お気軽にお問い合わせください

マロニエ会計事務所では、「会社合併による節税対策」のサポートに関するご相談を幅広くお受けしております。たとえば、以下のような支援が可能です。

  • 繰越欠損金の引継ぎ要件を満たすための合併スキーム立案と実行支援
  • 合併に伴う法人税・消費税・不動産取得税などの税務処理のコンサルティング
  • 適格合併の要件を満たすための事前準備と関連届出書類の整備
  • 合併後の財務影響分析と銀行・取引先への説明資料作成サポート
  • グループ内資産移転の税負担軽減策と株価対策を見据えた組織再編戦略立案

こうした幅広い支援メニューを取りそろえ、貴社の現状やご要望に合わせた柔軟な対応をいたします。

きし

「複数のグループ会社を持つが運営コストと税負担を減らしたい」「不動産をグループ内で移転する際の税金を抑えたい」など、まずはお気軽にお悩みをお聞かせください。

初回のご相談やお見積もりも無料で承っておりますので、ぜひお気軽にご連絡ください。

目次