
こんにちは。中小企業向けキャッシュフロー計算書にも強い、栃木・宇都宮のマロニエ会計事務所です。
「売上は順調なのに、次の投資のタイミングが分からない…」
「事業拡大に向けて、資金計画の精度を上げたい」
「経営判断の材料として、もっと現金の動きを把握したい」
このような思いをお持ちの経営者の方は少なくないのではないでしょうか。
多くの中小企業では、日々の業務に追われ、「損益計算書(PL)」や「貸借対照表(BS)」の確認で精一杯。
「キャッシュフロー計算書(CF)」の作成までは手が回らないというのが実情です。
しかし、キャッシュフロー計算書は、思っているほど難しくありません。
本記事では、以下のような課題解決に向けた具体的な方法をご紹介します。
- 「利益は出ているのに資金ショートの危機」を未然に防ぎたい
- 銀行からの融資を受けやすくしたい
- 経営判断の精度を上げたい
Excelを使った簡単な作成方法から、経営に活かすためのポイントまで、すぐに実践できる内容をステップ by ステップでお伝えします。
決して難しい話ではありません。これまでの経理作業にプラスアルファの視点を加えるだけで、より確かな経営の羅針盤を手に入れることができます。ぜひ最後までお付き合いください。
中小企業におけるキャッシュフロー計算書の役割
中小企業がキャッシュフロー計算書を作成する意義は、大企業と比較してより重要性が高いと考えられます。
これは、中小企業が相対的に資金調達力に制約がある中で、日々の現金の流れを緻密に管理する必要性が高いためです。
本章では、キャッシュフロー計算書が果たす実務的な役割とその重要性について解説します。
資金繰り管理とキャッシュフローの関連性
キャッシュフロー計算書は、企業の現金収支を「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3区分で可視化する財務諸表です。中小企業における資金繰り管理において、以下の実務的意義が認められます。
リスク管理の実効性向上
営業活動によるキャッシュフローが黒字であっても、投資活動や財務活動による支出が過大である場合、実質的な手元流動性は低下します。
また、財務活動による資金調達で一時的な流動性を確保していても、営業活動によるキャッシュフローが恒常的な赤字である場合、中長期的な財務健全性にリスクが生じます。
これらのリスク要因を、3区分の分析により早期に特定することが可能となります。
会計上の利益と現金収支の差異管理
売上計上時点と実際の現金回収時点には、通常タイムラグが発生します。売掛金回収サイト、滞留債権の存在、仕入債務の支払条件等の要因により、会計上の利益計上と実際の現金収支には差異が生じます。
会計上の利益は黒字なのに資金が尽きて倒産してしまうという「黒字倒産」という言葉もあります。
キャッシュフロー計算書の定期的な作成により、この差異を適時に把握することが可能となります。
対外的信用力の向上
キャッシュフロー計算書の作成・活用は、金融機関および取引先に対する信用力向上に寄与します。具体的には以下の効果が期待されます。
金融機関との取引における優位性
融資審査において、キャッシュフロー計算書の提示は、企業の資金繰りおよび使途の明確化に貢献します。
金融機関が重視するのは実際の融資したお金が返せるかどうかという資金の流れです。
キャッシュフロー計算書の提示は、与信判断における積極的な評価要因となり得ます。
取引先に対する財務透明性の確保
キャッシュフロー計算書の整備は、企業の財務管理体制の充実を示す指標として機能します。
取引先における与信管理上の評価要因となるとともに、長期的な取引関係構築への寄与が期待されます。
このように、キャッシュフロー計算書は中小企業における実効的な財務管理ツールとして、内部管理および外部評価の両面で重要な役割を果たします。
キャッシュフロー計算書の基本構造と作成ステップ

キャッシュフロー計算書に苦手意識を持つ方の多くは、「作り方が分からない」「難しそう」という声を上げます。しかし、最初からすべてを完璧に行う必要はありません。
まずは基本的な構造を理解し、シンプルな方法で導入してみることが重要です。
シンプルに始めるなら間接法がオススメ
キャッシュフロー計算書の作成方法には大きく「直接法」と「間接法」の2種類があります。中小企業がまずシンプルに始めるなら、間接法がオススメです。理由は以下のとおりです。
- 当期純利益からスタートして調整していくため、PLとつながりが分かりやすい
- 一部の会計ソフトやExcelテンプレートでも作成がしやすい
- 細かい取引の把握が難しくても、大まかな営業CF・投資CF・財務CFを押さえるだけで十分役立つ
間接法では「当期純利益」に非現金取引(減価償却費や引当金増減など)を加減し、さらに運転資金の増減も加えながら営業活動によるキャッシュフローを導きます。その後、投資活動、財務活動によるキャッシュフローを加味して、最終的に現金の増減を把握する流れです。
最低限必要なデータと科目整理
間接法でキャッシュフロー計算書を作る場合、試算表(PL・BS)のデータを元に以下を用意するとスムーズです。
主要な非現金項目の確認
減価償却費、貸倒引当金、退職給付引当金などは、営業活動で費用として計上される一方で、実際には現金の支出を伴いません。これらはキャッシュフロー計算書で調整が必要です。
運転資金(売掛金・買掛金・棚卸資産など)の増減
売掛金が増加すると、売上が発生していても実際の現金は入ってきていないことになります。逆に買掛金が増えている場合は、仕入れはしていてもまだ支払いをしていない状態を表します。
これらをきちんと計上することで、手元資金の増減理由が明確化します。
Excelでの簡易テンプレートの活用
市販の書籍やウェブサイトからExcelのキャッシュフロー計算書をダウンロードできる場合があります。
まずは1期分のデータを入力し、どのような増減要因があるかを把握するところから始めてみましょう。
慣れてくれば、どのような会計ソフトのデータでも試算表と仕訳帳さえあれば、簡単なキャッシュフロー計算書を自作することができます。

私は試算表と仕訳帳を組み合わせて、ExcelのPivotテーブル機能などを活用して簡易的なキャッシュフロー計算書を作成することが多いです。
中小企業が陥りやすい注意点と対策

キャッシュフロー計算書を作り始めると、「実際の口座残高と合わない」「完璧に作ろうとして途中で諦めてしまう」などの問題に直面することがあります。
しかし、これらの問題点は事前に知っておくだけで対策が立てやすくなります。ここでは具体的な注意点と対策を見ていきましょう。
実際の現金残高と合わない時に確認すべきポイント
キャッシュフロー計算書を作成してみたはいいものの、最終的な現金残高が帳簿や通帳の残高と合わないという事例は中小企業でよくあります。原因としては、下記のような可能性が考えられます。
- 非資金損益項目の調整漏れ
減価償却費や引当金などの非資金損益項目の調整が漏れてしまうと、期末時点の数字が合いません。 - 運転資本の増減の調整漏れ
売掛金や買掛金、未収金などの運転資本項目の調整が漏れている場合も、期末時点の数字が合いません。
完璧を求めてしまうリスク
キャッシュフロー計算書は、完璧に作ろうとすると非常に難しい作業が求められます。
貸借対照表や損益計算書を作成するための仕訳だけではなく、キャッシュフロー計算書作成のための固有の概念を理解していく必要があります。
ただ、中小企業の場合、経理担当者は経理以外の業務にも追われることが多く、キャッシュフローの作成方法を一から完璧にマスターするのは非常に困難でしょう。
そして、社長からキャッシュフロー計算書の作成を指示されたのは良いが途中で挫折してしまい、結局キャッシュフロー計算書が作成できなかった、という事例は多いのではないでしょうか。
しかし、キャッシュフロー計算書は税務署への提出が求められている書類ではありませんので、教科書に書かれているような完璧なキャッシュフロー計算書を作成する必要はありません。
社内の内部管理用に必要な情報さえ集計できていれば問題はないでしょう。
自社の経理体制やリソースも踏まえて、適切なレベル感のキャッシュフロー計算書を作成しましょう。
シンプル導入でも専門家サポートのメリット
「まずはExcelで簡易版を作ってみよう」という姿勢は大切ですが、専門家のレビューを受けることを最終的におすすめします。
公認会計士にキャッシュフロー計算書をチェックしてもらうことで、次のようなメリットがあります。
- 融資審査対応での説得材料になる
金融機関への提出資料としての精度が高まるため、交渉がスムーズに進む可能性が上がります。 - 将来的な事業拡大に備えた経営管理体制が整う
事業拡大や新規プロジェクトの開始など、将来の資金需要を予測するうえでもキャッシュフロー計算書の正確性は重要です。
“シンプル導入”といっても、正確な数字の裏付けがある程度必要になります。
専門家を頼りつつ、まずは自社でできるところから着実に始めてみましょう。

Excelのフォーマットや集計方法の仕組み作りだけ、最初に専門家に頼んでしまうというのも1つの方法です。
簡易キャッシュフロー計算書の導入事例

ここでは実際に中小企業が「簡易キャッシュフロー計算書」を導入して、どのような効果を得たのかを2つの事例で紹介します。「うちの会社に当てはまりそう」と感じる点があれば、ぜひ参考にしてみてください。
Excelベースで月次管理を始めたA社の成功例
事例概要
- 業種:卸売業
- 社員数:約30名
- 元々PLとBSは毎月確認していたが、キャッシュフロー管理はしていなかった
A社では、売上は伸びているのに手元資金が増えないという問題に悩んでいました。
銀行から融資を受けていることもあり、「キャッシュフローを見える化してほしい」と要望が出ていたため、まずは社内でExcelテンプレートを作成して月次でキャッシュフロー計算書を作り始めました。
- キャッシュの増減要因を把握
「売掛金の回収が遅れている」「在庫が増えすぎている」といった要因が明確になり、適切な在庫水準の見直しを実施。 - 銀行融資の交渉がスムーズに
簡易的なキャッシュフロー計算書でも、利益と現金の関係が整理されていたため、追加融資の申請時に「この資金をどう使い、どう回収するか」を説明しやすくなった。
結果として、A社は仕入れと在庫管理の改善を進め、キャッシュが毎月黒字で回る体制を構築できました。
社内でも「キャッシュに対する意識」が高まり、経理だけでなく営業や仕入れ担当も支払いサイクルを確認するようになりました。
キャッシュフロー経営への転換を果たしたB社の事例
事例概要
- 業種:製造業
- 社員数:約20名
- 元々PLとBSは毎月確認していたが、キャッシュフロー管理はしていなかった
B社は従来節税志向の強い会社で、PLの利益が出そうになると法人税額を下げるために、役員への給与を増加させたり、不要不急の車の買い替えや消耗品の購入などを実施していました。社長としては、「節税をしているのだからお金が貯まるはず」と考えていましたが、会社に一向にお金が貯まらない状況を見かねて、キャッシュフロー計算書の作成を始めました。
- 会社全体の資金の流れを理解
キャッシュフロー計算書を確認したところ、確かに法人税の支払額は減少していたのですが、それ以上に、車両の購入による投資CFの減少や、当期純損益の減少による営業CFの減少が発生している現状を目の当たりに。節税額以上に会社の資金が外部へ流出していることを理解しました。 - 得意先・仕入先との支払いサイクル見直し
長年の慣例で行っていた支払いスケジュールを再検討し、キャッシュフローがマイナスにならないように調整。
結果として、現在B社の社長は法人税を支払ってでも会社にお金を残すというキャッシュフロー経営への転換を果たしました。
これにより、会社内部に資金が確保され、最新鋭の設備や機械を導入することが可能となり、取引先からの受注も増え、利益も年々増加しています。会社の資金の好循環を生み出すことに成功しました。
まとめ
キャッシュフロー計算書は、資金繰りを重視する中小企業にとって経営の羅針盤とも言える存在です。
売上や利益が増えたとしても、実際の現金がどれほど動いているのかを知らなければ、突然の資金不足に陥り、「黒字倒産」となってしまうかもしれません。
また、金融機関や出資者、取引先からも「キャッシュを管理できる会社」と評価されることで、信用力が高まります。
最初から難しく考えず、「簡易版」でもいいのでキャッシュフロー計算書を作ってみることが大切です。
Excelを使った間接法であれば、試算表さえあれば始められます。公認会計士にExcelの様式などの作成、導入を依頼するのも良いでしょう。
お気軽にお問い合わせください
マロニエ会計事務所では、中小企業のキャッシュフロー計算書導入と経営改善支援に関するご相談を幅広くお受けしております。たとえば、以下のようなサポートが可能です。
- Excelを活用した簡易キャッシュフロー計算書の作成支援
- 既存の会計ソフトを活用した効率的な作成体制の構築
- 売上と資金の関係性分析による経営改善提案
- 運転資金の最適化に向けた売掛金・在庫管理の見直し
- 銀行融資の申請時に必要な資料作成と説明資料の整備
こうした幅広い支援メニューを取りそろえ、貴社の現状やご要望に合わせた柔軟な対応をいたします。
「キャッシュフロー計算書を作りたいが何から始めればよいか分からない」「銀行からの要望に対応したい」など、まずはお気軽にお悩みをお聞かせください。

初回のご相談やお見積もりも無料で承っておりますので、ぜひお気軽にご連絡ください。
中小企業の実態に即したキャッシュフロー管理体制の構築と、それを活用した経営改善に向けて、最適な方法を共に考え、ご提案させていただきます。
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