![](https://maro-kaikei.co.jp/wp-content/uploads/2024/10/marofuki.webp)
こんにちは。新リース会計に強い、栃木・宇都宮のマロニエ会計事務所です。
2027年4月1日以降開始事業年度の強制適用に向けて、上場会社やそのグループ企業では、新リース会計基準が話題となっているかと思います。新リース会計基準については、会計処理や開示についての検討も勿論重要ですが、税務や税効果会計への影響も把握しておきたいところです。
そこで本記事では、新リース会計基準導入による税務や税効果会計への影響や注意点について解説したいと思います。
新リース会計基準の法人税法の取り扱い
令和7年度税制改正大綱によれば、新リース会計基準の会計処理と、法人税法の処理の比較は以下のようになると思われます。
新リース会計基準 | 法人税法 | ||
---|---|---|---|
リース取引 | オンバランス | 税務上のリース取引 (≒税務上のファイナンス・リース取引) | 売買処理 (オンバランス) |
リース取引以外の賃貸借取引 (≒税務上のオペレーティング・リース取引) | 賃貸借処理 (オフバランス) | ||
非リース | オフバランス | 非リース |
新リース会計基準 | 法人税法 | ||
---|---|---|---|
リース取引 | オンバランス | 税務上のリース取引 (≒税務上のファイナンス・リース取引) | 売買処理 (オンバランス) |
リース取引以外の賃貸借取引 (≒税務上のオペレーティング・リース取引) | 賃貸借処理 (オフバランス) | ||
非リース | オフバランス | 非リース |
結論としては、新リース会計基準が導入された後も、法人税法の考えは従来とほとんど変わらず、税務上のリース取引かどうか、という判断軸で処理を行います。
税務上のリース取引の判定は、旧リース会計基準のファイナンス・リース取引の判定(古ペイアウトや実質解約不能)とほぼ同じです。したがって、法人税法では、従来通り、ファイナンス・リースかオペレーティング・リースか、といった判断を行う必要があり、新リース会計基準の会計処理と相違が生じることから、税務調整が必要になるケースが想定されます。
特にオペレーティング・リース取引については、新リース会計基準では基本的に全てオンバランス(資産、負債計上)が必要となりますが、法人税法では賃貸借処理(オフバランス)を行うため、税務調整が必要になるケースがほとんどではないでしょうか。 以下のオペレーティング・リースの設例を用いて、会計と税務の仕訳を示します。
設例:
リース料総額 100,000千円
毎年の支払リース料 20,000千円
リース期間 5年
使用権資産計上額 95,000千円
1年目の支払リース料のうちに含まれる利息相当額 2,000千円
リース取引の形態は法人税法上、賃貸借処理が採用されるものと想定する
新リース会計基準(会計) | 法人税法(税務) | |
---|---|---|
使用権資産計上時(リース契約時) | (借方)使用権資産 95,000千円/(貸方)リース負債95,000千円 | – |
リース料支払時(1年目) | (借方)減価償却費19,000千円/(貸方)使用権資産19,000千円 (借方)リース債務18,000千円/(貸方)現金預金20,000千円 (借方)支払利息2,000千円 | (借方)支払リース料20,000千円/(貸方)現預金20,000千円 |
税務調整 | 減価償却費19,000千円+支払利息2,000千円=21,000千円と支払リース料20,000千円の差額1,000千円を税務上、加算・留保で調整 |
新リース会計基準(会計) | 法人税法(税務) | |
---|---|---|
使用権資産計上時(リース契約時) | (借方)使用権資産 95,000千円/(貸方)リース負債95,000千円 | – |
リース料支払時(1年目) | (借方)減価償却費19,000千円/(貸方)使用権資産19,000千円 (借方)リース債務18,000千円/(貸方)現金預金20,000千円 (借方)支払利息2,000千円 | (借方)支払リース料20,000千円/(貸方)現預金20,000千円 |
税務調整 | 減価償却費19,000千円+支払利息2,000千円=21,000千円と支払リース料20,000千円の差額1,000千円を税務上、加算・留保で調整 |
税務調整にあたっては、会計上の減価償却費、支払利息の金額と、毎年の支払リース料の差額を集計する必要があり、非常に煩雑になるものと予想されます。
また、リース期間が経過するにつれて、加算・留保した調整額は認容で減算・留保されることになるため、リース取引ごとに税務調整額を管理するエクセルを作成したり、専用の管理ソフトを導入するかたちになるのではないかと思われます。
減価償却費や支払利息についても、オペレーティング・リースに係るものは別で補助科目等で分けるなどして、抽出できるようにしておいた方が良いかもしれません。
このように、オペレーティング・リースについては、税務上は非常に煩雑な管理が要求されることになります。
正直、法人税法も新リース会計基準に歩調を合わせて改正をしてほしかったですが、世の大半の中小、中堅企業は新リース会計基準の影響がないことから、中小、中堅企業にも影響が生じる法人税法の抜本的な改正は躊躇したのではないかと思われます。
新リース会計基準の消費税法の取り扱い
![](https://maro-kaikei.co.jp/wp-content/uploads/2025/01/new-lease02-1.webp)
令和7年度税制改正大綱では、新リース会計基準について消費税法の取り扱いについては特に言及がありませんでした。
しかし、税務通信No.3835「オペリース 消費税も引き続き支払の都度控除」の記事によれば、消費税法は法人税法の考えに歩調を合わせ、税務上のファイナンス・リース取引の場合はリース資産に係る仕入税額を一括控除し、オペレーティング・リース取引の場合にはリース料の支払いの都度、仕入税額控除を計上するかたちになるようです。
消費税法上も、オペレーティング・リース取引の場合には、非常に煩雑な管理が必要になると思われます。
まず、使用権資産計上時にはリース料の総額を資産として計上する形になりますが、使用権資産に含まれる仮払消費税は、仕入税額控除を一括で計上することができません。
したがって、使用権資産に係る仮払消費税は仮払金勘定などにプールしておき、毎期、リース料の支払いの都度、仮払消費税に振り替えて、仕入税額控除を計上するというかたちになることが予想されます。
オペレーティング・リース取引の使用権資産に係る仮払消費税の別管理が必要になります。
新リース会計基準の地方税法(外形標準課税)の取り扱い
令和7年度税制改正大綱によれば、事業税付加価値割の算定において、オペレーティング・リース取引により土地又は家屋の賃借を行った場合は、その賃借料は支払賃借料として集計することになるようです。
新リース会計基準導入後は、税務上のオペレーティング・リース取引について、会計上は毎期、減価償却費と支払利息という勘定科目で費用処理されていくのですが、付加価値割の算定上は賃借料として集計しなおす必要があるようです。
なお、減価償却費と支払利息の合計額によっては、実際の支払リース料の額よりも金額が大きくなるケースもあります。大綱では明言されていませんが、支払利息相当分も付加価値割の算定基礎に含めるとしたら、付加価値割が増税になる可能性もあります。
大綱が出るまでは、新リース会計基準が導入されれば、費用計上の勘定科目が減価償却費と支払利息に変わるため、付加価値割の賃借料の金額が減少し、付加価値割の税額が少なくなるのでは、と予想している方もいましたが、見事にブロックされたかたちですね。。。
税収はそう簡単に減らさないよ、ということでしょうか。
新リース会計基準の税効果会計の取り扱い
![](https://maro-kaikei.co.jp/wp-content/uploads/2025/01/new-lease02-2-1.webp)
新リース会計基準を導入するのは上場会社や会計監査が入っている会社であるため、税効果会計への影響も気になるところでしょう。
法人税法上で使用権資産とリース債務の計上が認められない場合には、使用権資産については将来加算一時差異を、リース債務については将来減算一時差異を認識することになるものと思われます。
特に、税務上のオペレーティング・リース取引については、会計と税務で相違が生じるため、一時差異の認識が必要になるものと思われます。
基本的に、使用権資産とリース債務の計上金額は同額、もしくは大きな差異は生じないと思われ、その後の解消パターンも概ね一致するかと思いますので、一時差異の回収可能性の判断においては、両者が相殺され、実質的な会計上のインパクトはほとんど生じないケースも多いのではないかと思います。
しかし、業績が悪化し、将来の課税所得の発生見込みもない、繰延税金資産の回収可能性指針の会社分類5の会社に関しては注意が必要です。
会社分類5の会社に関しては、基本的に将来減算一時差異は回収可能性がないものとして、繰延税金資産(リース債務)の計上は行いません。
一方で、将来加算一時差異(使用権資産)については、会社分類が5であっても全額を繰延税金負債として計上する必要があります。
そのため、自社が会社分類5だということで、新リース会計基準による税効果会計の影響がないと判断してしまうと、多額の繰延税金負債の計上を見逃してしまう可能性があるため注意が必要です。
また、繰延税金負債が計上されると、損益計算書に計上される法人税等調整額は利益を減らす方向に動いてしまうため、当期純損益や自己資本比率の悪化も招く可能性があります。
会社分類5に該当している会社ですと、財務制限条項にも抵触する可能性があるかもしれません。
新リース会計基準導入の際の影響度調査時にはぜひ税効果会計による影響額も調査しておきたいところです。
また、連結グループ間のリース取引について個別財務諸表で繰延税金資産や負債を計上している場合には、連結修正仕訳で当該仕訳を消去することも忘れないようにしたいところです。
まとめ
新リース会計基準の導入によって、税務や税効果会計へどのような影響を及ぼすかを解説いたしました。
税制改正大綱で税法改正の指針が示されただけの状態であるため、実際の法人税法や消費税法の条文ではまた違った処理になる可能性もあります。
しかし、現状の情報だけでも色々と予想できる論点があることから、本記事が少しでも新リース会計基準導入による税務や税効果会計の検討のお役に立てればと思います。
お気軽にお問い合わせください
マロニエ会計事務所では、上場企業、子会社向けのご相談を幅広くお受けしております。
- 新リース会計基準の導入対応
- 連結パッケージ作成のアウトソーシング
- 税効果会計・引当金などの高度な会計処理支援
- システム導入サポート
- マニュアル整備
- 監査法人との折衝
- 書類対応のサポート
こうした幅広い支援メニューを取りそろえ、御社の状況に合わせた柔軟なサポートを行います。
まずは「こんなことで悩んでいる」「こういう改善を目指したい」というお気持ちをお聞かせください。
![](https://maro-kaikei.co.jp/wp-content/uploads/2024/10/marofuki.webp)
初回相談やお見積もりも承っておりますので、お気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
\ 24時間受付しております!/