ベトナムの会計・税務は日本と何が違う?進出企業が押さえるべき実務ポイントを解説

きし

こんにちは。栃木・宇都宮のマロニエ会計事務所です。

ベトナムは、労働力の豊富さやコスト面の優位性から、日系企業の海外進出先として根強い人気があります。

しかし、いざ現地で事業を始めると、会計制度や税務の仕組みが日本とは大きく異なることに戸惑うケースが少なくありません。

全企業共通の勘定科目コード、外資企業に一律で課される会計監査義務、損金算入の可否を左右するレッドインボイス制度など、日本の感覚では想像しにくいルールが数多く存在します。

本記事では、ベトナムに現地法人を持つ、または進出を検討中の日系企業の方に向けて、現地の会計制度と税務の要点を「日本との違い」に焦点を当てて解説します。実務で見落としやすいポイントや、投資回収時の税務についても触れていますので、海外事業の管理にお役立てください。

なお、本記事は令和7年4月1日時点の法令等に基づいて記載しております。

目次

ベトナムの会計制度|日本との主な違い

ベトナムにおける会計制度のポイントと、日本の会計制度との主な違いを解説していきます。

会計基準(VAS)の特徴 ― IFRSベースだが取得原価主義が残る

ベトナム会計基準というものが採用されています。

これはヨーロッパを中心に世界的に採用されている国際財務報告基準(IFRS)をベースに作成されています。

日本の会計基準と根本的な相違点はありませんが、以下のような特徴があります。

取得原価主義の色が濃い

中小企業にはあまり関係がありませんが、上場企業でベトナム進出する場合は注意が必要です。

ベトナム会計基準はIFRSをベースに作成されているものの、減損会計や金融商品会計がまだ未発効であり、取得原価主義の色が濃い会計基準となっています。

そのため、連結決算を作成する際には、一部の科目について、ベトナム現地の決算書を時価ベースに組み替える必要があります。

現地商慣行等に基づく固有の会計処理が存在する

ベトナムでは土地は国有であり、個人や企業は国から土地の使用権を借りるかたちになります。この使用権に関しては、長期前払費用として計上したうえで、最大50年にわたり費用化していきます。

ベトナムに限りませんが、現地の決算書を確認する際には、このように現地の法律や商慣行に基づく固有の会計処理が発生することがあります。

決算書類 ― キャッシュ・フロー計算書の作成が必須

ベトナムでは以下の決算書類を作成する必要があります。

  • 財政状態計算書(貸借対照表)
  • 損益計算書
  • キャッシュ・フロー計算書
  • 財務諸表の注記

キャッシュ・フロー計算書の作成が求められていることが、日本とは異なる点です。

また、言語は全てベトナム語表記が求められています。なお、日本語や英語など、外国語を併記することは認められています。

また、基本的には決算書の表示通貨はVND(ベトナムドン)建てになります。

会計期間 ― 原則は暦年(1月〜12月)、届出で3月決算も可能

ベトナムにおける会計期間は原則として1月1日から12月31日までの暦年とされています。

ただし、事前に現地税務当局への届出を行うことにより、3月、6月、9月末を決算日とすることも認められます。

日本の親会社が3月決算であることが多いため、事前申請により、3月末に決算日を変更しているケースも多いです。

会計ソフト ― MISA・FASTと税務申告ソフトの連携

MISAやFASTといった代表的な現地会計ソフトがあります。

また、グローバル展開している日系企業はmultibook、GLASIAOUSなどのグローバル管理向けの会計ソフトを使用していることもあります。

なお、税務申告書類は現地財務省が配信している税務申告ソフトを使用する必要があるため、会計ソフトで作成した決算書を当該税務申告ソフトに取り込む必要があります。

勘定コード表 ― 全企業共通の統一勘定科目

ベトナムでは会計の勘定科目は全て指定されており、全企業、全業種で同じ勘定科目のコードを使用する必要があります。

日本は、特に中小企業では各社様々な勘定科目を使用しているため大きな違いです。

勘定科目体系が統一されている背景は、異業種間や他社間の財務数値の比較を容易にするためです。日本ではなかなかこのような統一管理はできないと思うので、ベトナムの社会主義的な一面が表れているのかもしれません。

ベトナム国内の企業はどの企業も同じ勘定科目、コードを使用するかたちになりますので、実務上は、具体的な勘定科目名ではなく、勘定コードの番号で会計処理の確認や質問のやり取りを行うことが多いです。

きし

また、日本において連結決算を作成する場合や、日本親会社の業績と単純比較したい場合には、ベトナム現地の決算書を日本親会社の勘定科目体系に1度組み替える必要があるでしょう。

会計監査 ― 外資企業は規模を問わず監査が義務

全ての外国企業については、会計監査を受けることが求められています。

1%でも外国の個人や法人の出資が入っていたら、会計監査の対象になります。

毎期、企業から独立した監査人に監査手続き及び監査報告書の作成を依頼する必要があります。この会計監査は、日本でいう会計事務所職員による巡回監査のようなレベル感ではなく、監査基準という基準にしたがって厳格に行われるものです。

日本では上場企業や大企業しか会計監査は義務付けられていないため、注意が必要です。

チーフ・アカウンタント制度 ― 1年以内の任命が必要

会社設立日から1年以内に、チーフ・アカウンタントという役職を1人任命する必要があります。これは日本には存在しない概念です。

チーフ・アカウンタントになるためには現地の試験をパスして、会計の実務経験も必要になるため、日本人がチーフ・アカウンタントになることは難しいです。

一方で、外部の現地の会計事務所をチーフ・アカウンタントに任命することも可能です。

そのため、現地の会計事務所をチーフ・アカウンタントに任命し、それとは別に社内に1人、経理実務担当者を配置する、といったかたちで対応している企業は多いです。

ベトナムの企業税務|法人税・VAT・FCTの要点

ベトナムにおける企業税務のポイントを解説していきます。

法人税 ― 税率20%、四半期予定申告あり

基本的には日本の法人税と同じように、会計上の利益から税務上の調整を行って課税所得の計算を行います。そのほか、ベトナムの法人税の特徴を以下で解説します。

法人税率

法人税率は20%となっています。法人地方税はありません。

日本よりも法定実効税率は低いです。

また、日本側のタックスヘイブン税制のトリガー税率に抵触することも基本的にはないかと思います。

申告期限

四半期ごとの予定申告と、決算時の確定申告の2つがあります。

四半期ごとの予定申告に関しては、各四半期末から30日以内に、翌四半期の予定納税を行います。

確定申告については事業年度末から90日以内に行う必要があります。

繰越欠損金

発生した翌年度から5年間の繰り越しが可能です。

レッドインボイス ― 損金算入・VAT控除の生命線

政府運営の電子インボイスシステム(Web)により、電子発行されるインボイスをレッドインボイスといいます。

現在は完全電子化されていますが、紙の時代は赤色の紙であったことから、レッドインボイスと呼ばれています。

このレッドインボイスの保存がないと、法人税の経費算入もできませんし、VATの仕入税額控除もすることができません。

流しのタクシー会社はレッドインボイスではなく、紙の白色のインボイスを発行するようなケースもありますが、そのインボイスでは経費算入できません。企業の場合は使うタクシー会社を予め決めているようなケースが多いようです。

レッドインボイスに関して、金額や宛名などの記載誤りが少しでもあると経費算入やVAT控除ができないため、税務調査でも念査項目となってきます。

そのため、ベトナムの会計実務では、会計ソフト入力の際にこのレッドインボイスの確認、照合に非常に多くの工数がかかっているのが現状です。

また、このようなレッドインボイスの性質を逆手に取り、偽造電子インボイスを発行するダミー会社が乱立しており、当局も頭を悩ませているようです。この偽造電子インボイスを使用し、経費精算、損金算入を行うケースが増えているようです。

社内の不正防止の観点から考えると、多額の現金を引き出して、高額のインボイスを現金精算しているような場合は、従業員個人が会社のお金を裏で横領しているようなケースも想定されるため注意してください。

定期的に現地を訪問して帳簿書類の査閲を行ったり、月次の試算表の推移を分析して異常な費用が発生していないかどうかをチェックするといった対策が有効です。

きし

余談ですが、海外進出する場合には、日本と現地との経済格差や国民性も十分に理解しておく必要性があります。

日本人では行わないような不正を現地の従業員が行ってしまったという事例を多く見聞きします。
企業自身のためでもありますし、現地の従業員を犯罪者にしないためにも、不正を防止する内部統制は日本よりも強固に構築しておく必要があります。

VAT(付加価値税) ― 月次or四半期申告の実務負担

VATについては、申告、納税のタイミングは月次もしくは四半期ごとになります。

ただし、設立から1 年未満の新規設立法人もしくは前事業年度の売上が 500 億 VND(1VND=0.0056円とすると、2.8億円) 以下の場合には、月次ではなく四半期の申告、納税にすることもできます。

毎月申告、納付の場合には、レッドインボイスの集計などに日々追われ、日常の経理業務が非常に煩雑になります。

外国契約者税(FCT) ― 租税条約との乖離に要注意

ベトナム企業が外国企業に対して利子やロイヤルティ、機械の据え付け費用等を支払う際に発生する税金です。VATとCITという2つの税目から構成されます。通常、支払を行うベトナム企業側で源泉徴収を行い、現地当局に納税するかたちになります。

きし

このFCTに関して、現地当局の税務調査で源泉徴収、納付漏れを指摘されるケースが多いです。

なお、FCTに関して、ベトナム国内法ではPEの有無にかかわらず課税されると規定されておりますが、日越租税条約ではPEなければ課税なし、としています。

租税条約に基づけば、ベトナム現地にPEが存在しない日本企業へ利子、ロイヤルティの支払いを行う場合にはFCTは課税されないはずなのですが、実務上はベトナム国内法を優先して課税されてしまっているのが現状です。

また、租税条約に基づかない課税ということで、日本で外国税額控除が適用できない可能性があるというリスクもあります。

租税条約の免除申請を行えばFCTが免除になる可能性もありますが、現地の税務当局の租税条約に対する理解不足や手続きの煩雑さにより、ほとんどのケースではFCTを納税したまま泣き寝入りになってしまっているようです。

投資回収方法と日本側の税務 ― 配当・ロイヤルティ・貸付の比較

日本企業がベトナム現地子会社から投資を回収する際の税務について、パターン別にまとめると以下の通りです。

投資の回収方法ベトナム現地での課税日本での課税実務上のポイント
配当特になし要件を満たせば配当の95%が益金不算入総会等の決議を経て現地当局に事前通知をすれば配当可能利益の範囲内で配当可能
ロイヤルティFCT(源泉税)10% (無形資産利用の場合:VAT0%,CIT10%) (技術支援等役務提供の場合:VAT5%,CIT5%)全額収益として課税
FCTのCIT部分は外国税額控除適用対象だが、租税条約、PEとの関係に注意
レッドインボイスの発行や当局による税務調査リスクなどがある
特に日本親会社への出金に関しては詳細な説明書類がないと損金算入が否認される可能性が高い。
貸付利息FCT(源泉税)5% (VAT0%,CIT5%)全額収益として課税
FCTのCIT部分は外国税額控除適用対象だが、租税条約、PEとの関係に注意
借入期間1年未満(短期):使途は運転資金のみだが、中央銀行への報告等不要
借入期間1年以上(長期):使途は不問だが、中央銀行への報告等必要 ・短期、長期のいずれも契約書通りに返済しなかった場合は、国外への返済を制限されるリスクがある。特に、返済してすぐにまた貸付、といった実質的に返済していないような状況だと注意が必要。

現地法人で利益が出ており、配当可能利益がある場合には、配当で資金還流するのが税コストで見ても、事務面で見ても、メリットがあるとは思います。

配当に対して現地で源泉税が課税されないのは、ベトナム進出の大きな税務メリットです。

一方で、なかなか現地法人の利益が出ておらず、配当可能利益がないということもあると思います。その場合はロイヤルティや貸付で資金を還流するしかありません。ただし、配当よりは検討すべきポイントが多くなります。

また、ベトナム現地から資金を回収するというよりは、現地の赤字を補填するために日本企業から貸付を行っているケースもあると思います。

この場合には、実質的に貸付の返済が行われていない(例えば、短期の貸付金の返済、貸付を繰り返し、実質的には長期貸付金となっている)と、ベトナムから日本への返済が止められてしまう可能性もあるので注意したいところです。

利息を計上せずに免除している場合は、基本的には日本企業側で海外子会社への寄附金として課税されてしまうので、利息の計上も忘れずに行いましょう。

移転価格税制 ― 課税技術は発展途上だが油断は禁物

ベトナムにも移転価格税制が存在します。ただ、まだベトナム税務当局の課税技術が発展しておらず、日系大企業のグループ会社を中心に、手荒い課税処分が行われているようです。

まとめ|現地制度の理解が海外事業管理の基盤になる

ベトナムにおける会計、税務のポイントを解説いたしました。

ベトナムに限らずですが、現地の会計や税務の制度は日本と異なる点が多々あります。日本と同じ感覚で決算書数値や税金の予測をしてしまうと、経営判断を誤る可能性も大いにあります。

現地の会計、税務処理は現地会計事務所に依頼することがほとんどだと思いますので、実務上の細かな処理や手続きまでを理解する必要はありませんが、本記事でご紹介したような重要ポイントは必ず把握して、海外事業の管理を行っていく必要があります。

お気軽にお問い合わせください

マロニエ会計事務所では、「ベトナム進出企業の会計・税務」に関するご相談を積極的にお受けしております。貴社の状況に応じ、以下のような支援が可能です。

  • ベトナム会計制度への対応支援
    現地の会計基準(VAS)や統一勘定科目コードなど、日本との制度差異を踏まえた決算書の確認・組替をサポートします。
  • 会計監査・チーフアカウンタント制度の対応
    外資企業に義務付けられる会計監査への対応や、チーフアカウンタントの任命に関する現地会計事務所との連携を支援します。
  • 法人税・レッドインボイスに関する助言
    損金算入やVAT控除の要件となるレッドインボイスの管理体制や、四半期予定申告への対応についてご提案します。
  • 外国契約者税(FCT)・租税条約の適用支援
    ロイヤルティや利子の支払時に発生するFCTについて、租税条約の適用可否を含めた対応策を検討します。
  • 投資回収・資金還流の税務アドバイス
    配当・ロイヤルティ・貸付など、ベトナム現地法人からの資金回収方法ごとの日本側の税務影響を整理します。

貴社の進出形態や現地法人の状況に合わせ、最適な会計・税務対応策をご提案します。

きし

「現地の決算書を日本の連結にどう取り込めばいいかわからない」「レッドインボイスの管理体制を見直したい」「ベトナム子会社からの配当・ロイヤルティの税務処理を確認したい」といった具体的なご相談はもちろん、「ベトナム進出を検討しているが会計・税務面の全体像を把握したい」といった初期段階のご相談も歓迎しております。

初回のご相談やお見積もりも無料で承っておりますので、ぜひお気軽にご連絡ください。

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